営利良し馬は走るし母舞うし/頼家

皆も当時は源氏派。奈良、ここに今日から居ず、平家なら個々に京から伊豆へ行け。不屈歌えよ、腹痛絶えよ。魔法ならスマホ唸らす。海は湖は見ず。辛子蓮根から試練来ん。指揮官置けない葬式、棺桶ないそう。息したい絞殺死体、孵卵したい遺棄死体、考察したい腐乱死体。焼死体冷笑した慰霊。最盛詩法、室生犀星氏葬ろう。軽い酸性だルイ五世か、ルイ三世だるい語勢。うわー、どうしよう、ワード憂しよ。意気込むがいい、季語無害。日本語仕入れるのに本腰入れるの。にほんごしいれるの、にほんごしいれるの。

無さ俺のいじましい意志マジ祈れ/治虫

真のあと無問う乱心のアトムとウラン。液体煮え気体に。昇華というのは沸騰すんでしょうか、というのはフッと失すんで。冴えないと支えないとさ。晩に落としたら一番に音したライチ。食わないプリン掬わないプリンス。魔法かスマホ浮かす。医師は孔雀か意志薄弱か。住む土地仲介幾たびもするし済むと地中海行く旅もするし。特に今日監督に共感。ごきぶり然の動きぶり全能。うらぶれたーってか縁だろう、ラブレターって買えんだろ。自乗分だ文字、畳文だもん。じじょうぶんだもん、じじょうぶんだもん。

肉の大まかなの嫌や胃の仲間/大乃国

このポン酢なら餃子がいくつでも食べられる、みたいなCMを見て、餃子一個で満足できるポン酢のほうが胃腸にも財布にも優しいよなと思う。カロリー大量かロリータ衣料。まず言うまい不味い美味い。

自負の余地少ない子まま恋なくす/千代の富士

ラーメン屋みたくジャンプに名前を書く何だお前緊張してるのか/迂回『稀風社の貢献』より。そうか名前を書くのは緊張だったのか。平和ボケしてると島を盗まれるぞ、みたいな緊張を外注できるのがきっと高級レストランなんだろう。第一回石井僚一短歌賞はこんな感じかなってぼんやり想像していたものに、迂回さんの連作がいちばん近かった気がします。男子っぽいというか。受賞と次席がすべて女性だったのが逆に男子っぽいのかもしれない。歌葉新人賞の受賞者の五分の四が男性だったのは意外な気もする、今さら。おから塩辛し。

あの雨と稲妻やまずナイトメア/ノア

前例のある回文だけど名前を付けると五七五になるし面白みが増すかな、と。作者名で増す面白みって何なんだろ。作者名が作品の評価に影響しないうちが新人なのか。そういえば、〈第一回石井僚一短歌賞は年齢歌歴受賞歴など不問です。「新人賞を受賞したけれどそれからいまいちぱっとしないなあ」「新聞歌壇の選者をしているけれど初心に戻りたいなあ」というあなたの応募も、大歓迎!〉ってツイートがあったけど、選考会はまるっきり新人賞みたいだったなあ。将来性を見てたってことか。応募者がベテランだったとしても将来性は必要だもんな。作者をプロファイリングするような選考だと過去を評価しようとしてるみたいだし、こいつを信じる、と推してもらうほうが、受賞できなくても、期待を裏切らないようにって頑張れそう。箱船ん中に運ぶねんな蟹。

黒添いて来るかアネモネ明るくて/五十六

十数年わたしはこんなひきつったもようを顔と呼んでいたのか/直泰『稀風社の貢献』より。鏡を見てそう思ったなら怖いけど、壁の染みが顔に見えなくなったのであればむしろ呪いが解けたんだろう。置かれる場所や読み手の気分で意味が全く違ってしまう短歌って面白いなあと思っています。