2015-01-01から1年間の記事一覧

遺作彫る刃にオレオ二倍やる/北斎

シャープな刃とスイートなオレオの対比が浮世絵の構図のように決まっている。まるくて甘いオレオは金銭の暗喩なのだろう。そういえば『デジタル・ビスケット』という歌集は紙じゃなくCDなんだと、わりと長いあいだ思ってました。

リダイアル夜半りんりん逸る愛/ダリ

父が死んだという短歌で新人賞を受賞すると、父が生きているとわかったとき、短歌に嘘は許されるのか、嘘をついてまで賞が欲しいか、感動を返せ、みたいなことを言われるらしい。人が死んでなくてがっかりすんなよ。と思いつつ、存在しない人を存在させる嘘…

恋いたればきつさも寒さも五月晴れ/タイコ

俳句なんて初めてだから何を書いたらいいかわからなくて、悩んだんですけど、やっぱり恋かなあ、恋したらどんなきつい日も寒いことも字余りも平気だよねっていう気持ちを表現してみました。えっ、季語がふたつあるんですか。でも、恋するのに季節は関係あり…

烙印かいつまでここで待つ遺憾/イクラ

イクラは鮭の卵なのだとばかり思っていた。でも、そもそも鮭と鱒には、海へ出て育つと鮭で川に残れば鱒という程度の区別しかないらしい。つまり、鱒の卵もイクラなのだ。もしかして、俺のほんとうの父親は、マスオさんなんじゃないだろうか。

押すまいとばてたタマまた立てば問い/マスオ

この家でひとりになれるのなんて、いつ以来だろう。眠る愛猫の横に寝転がる。猫は押しつけがましくしないから好きだ。きっと強い意志で自制しているのに違いない。だからすぐに疲れてしまうのだろう。おや、目を覚ました。大きなあくびをひとつして起き上が…

お疲れだ白墨つつく僕は誰/カツオ

たまには予習でもしようかと思った、そんなときに限ってランドセルに教科書が見当たらない。教室へ取りに戻ったら、黒板に向いて誰か立っている。あれは、いっしょに帰った親友じゃないか。あいつも忘れ物かよ、気が合うな、と声をかけようとしたけれど、ど…

値札から予期したわたし清らかだ/フネ

そりゃわたしだって最初は馬鹿馬鹿しいと思いましたよ。でもね、わたしにはまだ小学生の息子と娘がいるんです。あの子たちが学校で、おまえのお母さんはお婆さんみたいだなんていじめられたら、かわいそうじゃないですか。そのことを考えたら、六十グラム十…

元値さえ教え幸いさえし終え/実朝

いい国家恥じん源氏はかっこいい。

群雄よ善処期し死去進ぜよう/ユング

三九三円に三十一円の消費税がついて四二四円になっているレシートを見て、回文の神と短歌の神に微笑まれた気がしました。

眠さまで眠るあやふやある胸で/政宗

伊達だ。電車を降りて改札を出るとき、ピッ、と指紋で精算する夢を見た。正夢かなあ。顔認証だったら、ピッ、も必要ないなと思ったけど検索したらすでにあるらしいがカメラを見つめてボタンを押さないといけないらしい。ボタンを押すなら指紋でええがな。

さっ行くかチリより鳥取より近く/一茶

http://d.hatena.ne.jp/tsukene/20080924/p1が面白かったので、いろんな人の句を探そうと思ったのが、のちに『手前の細道』としてまとめられたい旅のきっかけでした。