鬱金手に死なば子守りも小咄に/天功

宝石店のようなその美術館に、展示されているのは紐だった。長い紐。細い紐。鮮やかな紐。滑らかな紐。紐こそ世界を解く鍵なのです、と館長は私の頭に手を伸ばす。ほこりでもついてたかなと思うまもなくするするするするするするするするするするするするするするするするするするするするするするするするするするするするわたしはいっぽんのひもにほどけるここちがするするるる。

美術館館長Tが遺したる小さな鍵についての話/石川美南