無駄あらばあるおり祟り折る肋/アダム

日本語が読めない国へ国民を売るのに便利マイナンバーは/井上閏日

部位によるルフラン全裸触るる夜に/イブ

父を討つ貧しさのないまずしさにあえげば尊いダース・ベイダー/井上閏日

檻まねて噴き出した私抱き不貞寝/マリオ

ああ、わかりますよ、この気持ち。自分ってライオンみたいなものですからね、頑丈な檻に閉じ込めないといけないわけです。そんな凶暴なものが増えちゃうんですからね、不貞寝したくなることもありますよ。だいたい、おかしいじゃないですか。コインを集めた…

どさくさといえど都度都度えいと咲く/サド

プロ野球選手になりたかったけど現実に憲法を合わせた/井上閏日

満悦なまるい敵来ている真夏/閻魔

今俺を読み流してる人生に友情出演しているところ/井上閏日

丸出しで漏れ出す毛消す誰も弟子/達磨

みずからの改め方を明記した憲法みたいな上司が欲しい/井上閏日

鵜よ地位にしがみつきたき罪が詩に/一葉

へんじがないやつらをただのしかばねとみなせば僕はゆうしゃになれた/井上閏日

掘るたびに落ち給う馬たち鬼火/足穂

ドローンの規制をはかる官邸にオスプレイ落ちろと思わない/井上閏日

雲海よ敵意も危機も生きてよい/関羽

狼に煙たいだろう人間が危機を知らせるのろしのけむり/井上閏日

ミサイルが飛び交う粗相黴尖る/勇

ドローンをオスプレイより恐れてる視界のせまい都会に住めば/井上閏日

慈雨肩へ受けて四の五のして希有へ/尊氏

七夕の星に平和を願いつつ『スター・ウォーズ』の新作を待つ/井上閏日

時鳥異国に皮肉恋いすぎと/杜甫

この星を宇宙遺産にしようってうるさく光る五月の緑/井上閏日

駒売りて町去らむ村幸待てり/馬子

http://d.hatena.ne.jp/tsukene/20090524/p2、これ素晴らしいとずっと思っているわけです。単なる発掘ではない、作品だと思う。これ以外の回文を三回繰り返すことに意味はないし、二回でも四回でもなく三回がベスト、という判断を人工知能はできるようになる…

死見えるや蛇たりし私利旅へやる/蝦夷

言葉の組み合わせの突飛さでは人工知能に勝てない気がする。でも突飛ならいいってわけじゃないし、常識的と非常識の塩梅が人間味というか作家性なのかなあ。採点機能付きのカラオケで良い点を取る歌と人を感動させる歌は違うじゃないですか。いつか採点機能…

軽い死が昼間ずしり静まる干菓子/入鹿

スーパーに売ってる食材で作る料理と辞書に載ってる言葉で作る短歌は似ている。分量を守れ/定型を守れ、玄米のほうが栄養がある/文語のほうが深みがある、インスタントは体に悪い/慣用句は心に届かない、国産のほうが安心だ/虚構はけしからん、って僕は…

記者死んで名は知らるらし花電車/子規

横! 人身事故よ! ブログにログインできない。って別のブラウザではできたから書いてるけど、これもいつかできなくなるんだろうなあ。ハイテクな広告が表示できなかったりもするからこのブログがどんな鬱陶しいことになってるのかわかってません。送信ボタ…

句会去る背中キラキラ気化なせる/西鶴

栄養のあるパンケーキを想像してこれはお好み焼きだと思う、って短歌を作った人はケークサレなんてキラキラネームにごまかされない。

書いてきた詩が咲く大奥探したき/定家

くだけたい恋を気ままにはね返すモホロビチッチ不連続面、って短歌を作った人はモホロビチッチ不連続面が何であるか覚えていないに違いない。

刷り上げた詩にて餌さえ手にしたげ/アリス

結ばれるために生まれた風たちが笑って飛ばす超ひも理論、って短歌を作った人が超ひも理論を理解しているとは思えない。

軽さから多き難なき大らかさ/ルカ

どうしたって文学欲より食欲が優先されてしまうではないか/角田光代、って『よなかの散歩』で見つけた偶然短歌。初句と結句を字余りにすることで定型の遵守に優先するものの存在を示唆している。

根は良い子どけたいと説いたけど恋/ヨハネ

汚さないよう大切にしまっておいた本を何年ぶりかで見て、何でこんなのが大切だったんだろう、と捨てたことが何度もあります。気に入った服はたんすを肥やしてるし色鉛筆は好きじゃない色ほど短い。もちろん命も大切にしています。

凝るまいよデミグラスすらグミで良い/マルコ

この気持ち、わかります、僕も仙豆が欲しいとか光合成できたらいいのにとか思う小学生でしたから。アニメに登場する子供の食い意地にまったく共感できないですもん。

板前ぞミンチ類ボイル珍味添え/マタイ

小麦粉をこねたべたべたしたものが焼くとさくさくになるの楽しい。乾燥した米がふっくら炊けると嬉しい。ありふれた言葉で特別を書いた短歌は素晴らしい。

武器し見ず生きたい馬鹿ぞかばいたき/和泉式部

セーラー服の四人が管楽器を吹いている写真に「放出中」と書いてあるので何を放出してるのかと思ったら、ハナテン中学校でした。健康のためなら死んでもいいってのは冗談で済むが、地球のためなら人類が滅んでもいいと言うと怒られるみたいだ。他人を蹴落と…

遺作彫る刃にオレオ二倍やる/北斎

シャープな刃とスイートなオレオの対比が浮世絵の構図のように決まっている。まるくて甘いオレオは金銭の暗喩なのだろう。そういえば『デジタル・ビスケット』という歌集は紙じゃなくCDなんだと、わりと長いあいだ思ってました。

リダイアル夜半りんりん逸る愛/ダリ

父が死んだという短歌で新人賞を受賞すると、父が生きているとわかったとき、短歌に嘘は許されるのか、嘘をついてまで賞が欲しいか、感動を返せ、みたいなことを言われるらしい。人が死んでなくてがっかりすんなよ。と思いつつ、存在しない人を存在させる嘘…

恋いたればきつさも寒さも五月晴れ/タイコ

俳句なんて初めてだから何を書いたらいいかわからなくて、悩んだんですけど、やっぱり恋かなあ、恋したらどんなきつい日も寒いことも字余りも平気だよねっていう気持ちを表現してみました。えっ、季語がふたつあるんですか。でも、恋するのに季節は関係あり…

烙印かいつまでここで待つ遺憾/イクラ

イクラは鮭の卵なのだとばかり思っていた。でも、そもそも鮭と鱒には、海へ出て育つと鮭で川に残れば鱒という程度の区別しかないらしい。つまり、鱒の卵もイクラなのだ。もしかして、俺のほんとうの父親は、マスオさんなんじゃないだろうか。

押すまいとばてたタマまた立てば問い/マスオ

この家でひとりになれるのなんて、いつ以来だろう。眠る愛猫の横に寝転がる。猫は押しつけがましくしないから好きだ。きっと強い意志で自制しているのに違いない。だからすぐに疲れてしまうのだろう。おや、目を覚ました。大きなあくびをひとつして起き上が…

お疲れだ白墨つつく僕は誰/カツオ

たまには予習でもしようかと思った、そんなときに限ってランドセルに教科書が見当たらない。教室へ取りに戻ったら、黒板に向いて誰か立っている。あれは、いっしょに帰った親友じゃないか。あいつも忘れ物かよ、気が合うな、と声をかけようとしたけれど、ど…